六月の雨
またひとしきり 午前の雨が
菖蒲の色の みどりいろ
眼うるめる 面長き女
たちあらわれて 消えてゆく
たちあらわれて 消えゆけば
うれひに沈み しとしとと
畠の上に 落ちてゐぬ
はてもしれず 落ちてゐぬ
お太鼓叩いて 笛吹いて
あどけない子が 日曜日
畳の上で 遊びます
お太鼓叩いて 笛吹いて
遊んでゐれば 雨が降る
櫺子の外に雨が降る
汚れっちまった悲しみに
中原中也である。確か、高校生だったか、中学生だったか、
ハッキリした時期は忘れてしまったが、
教科書に載っていた詩がずっと印象に残っていた。
詩よりもむしろ、中也の写真と言った方がいいかもしれない。
帽子をかぶった、憂いのある大きな瞳をもった美少年。
三十歳の若さで結核性脳膜炎のため死去。
こんな美しい詩を書き、若死にしてしまった中也。
なんて、ドラマティックなんだろう。
10代の少女が、中也に心惹かれてしまったのも
無理のないことであったと思う。